君たちは、最後まで諦めずに全力で戦い、最後の1秒まで戦い抜きました。
でも、今はそんな言葉が何の慰めにもならないかもしれません。
最後の試合、あの日、あの一球、あの最後のアウト。
頭では受け入れようとしても、心がついていかない。
あれだけやってきたのに、悔しい。悲しい。終わってほしくなかった。
負けた瞬間、目の前が真っ白になったかもしれない。
膝から崩れ落ちそうになったかもしれない。
悔しくて、叫びたくなるほど、涙が止まらなかったかもしれない。
でもそれは、君が本気だった証拠だ。
それだけ「この夏」に賭けていたということだ。
今、そんな気持ちの中にいる君に、メンタルトレーナーとして、そして一人の人間として伝えたい言葉があります。
■「負けて終わる」のが、当たり前の世界
勝って終われるチームは、全国で1つだけ。
でも、「負けて終わる」のは、多くの人の始まりになる。
勝ったときよりも、負けたときの方が、人は深く自分と向き合う。
その経験が、人としての「厚み」をつくる。
勝敗を超えた“価値”を手にした君は、
これからの人生、どんな場所でも戦っていける。
「負け」は「失敗」じゃない。
むしろ、
「悔しさを知る経験」こそが、本当の勝利の始まりなんです。
■努力は消えない。結果だけがすべてじゃない。
負けたからといって、君がやってきた努力がゼロになるわけじゃない。
早朝の素振り、雨の日の走り込み、仲間とのぶつかり合い。
誰にも見られていない時も、必死で続けてきた毎日。
そのすべてが、
これからの君の人生を支える「土台」になっています。
努力は裏切らない――。
ただ、期待通りの形で返ってこないことがあるだけ。
高校野球という限られた時間で学んだことは、
これからの人生の土台になる。
悔しさは、挑戦した者にしか得られない「勲章」だ。
逃げなかった君にしか味わえない「痛み」だ。
それは、これから何かに挑むたびに、
君を奮い立たせる原動力になる。
■「勝つこと」よりも大事なもの
人生において、「勝つ」ことがすべてじゃない。
勝ち負け以上に大切なのは、「本気で何かに向き合った経験」です。
本気でぶつかったことがある人は、
社会に出ても、人と関わる場面でも、自分と向き合う場面でも、
逃げない強さを持っています。
君たちがグラウンドで流した汗や涙は、
そのまま「生きる力」に変わっていくんです。
■最後に伝えたいこと
「もう一度、あの仲間と、あの夏をやり直したい」
そう思う気持ちは、簡単には消えない。
でもね。
その想いがあるからこそ、君はこれからも強くなれる。
高校野球は終わっても、人生は続いていく。
そして君には、これから無限の可能性が広がっている。
この敗戦の経験を、自分の人生の「武器」にできるかどうか。
それは、これからの君の歩き方次第だ。
君が、本気で野球と向き合った3年間を、誇りに思っていい。
そして、これからの人生も、きっと大丈夫だ。
なぜなら、
「本気の夏をやりきった君」には、負けない心がもう宿っているから。
心から、おつかれさま。そして、ありがとう。
また、これからのステージで、胸を張って歩いていってください。
■そして、まだ勝ち続けている選手へ。
いま、君はチームとともに、まだ夢の舞台を追いかけている。
毎日の緊張とプレッシャーの中で、勝ち続けているその姿は本当に尊い。
でも、どうか忘れないでほしい。
君のその背中を、すでに引退したライバルたちが見ているということを。
彼らは、君を羨ましいと思うかもしれない。
でも、同時に心から応援しているはずだ。
この先、どんな結末が待っていようと、
「今を本気で生きたかどうか」こそが、心に残る財産になる。
甲子園に届いたとしても、そうでなかったとしても、
やりきった夏は、かけがえのない宝物になる。
今、プレーできるこの瞬間を、
最後の一球まで、自分らしく、仲間とともに戦い抜いてほしい。
そして願わくば――
君のそのプレーが、
負けたライバルたちの「想い」も背負って輝くことを。
最後に
「負けた者」と「勝ち残った者」に分かれる高校野球の世界。
でも本当は、誰一人として「無意味な夏」を過ごした選手なんていない。
それぞれが、それぞれの場所で、
かけがえのない経験を手にしている。
どうか誇りを持って、それぞれの夏を胸に、
新たな一歩を踏み出していってほしい。
高校野球という舞台で、本気で生きたすべての選手へ――
心から、ありがとう。そしてこれからも、応援しています。