前回は、ワールドカップにおける南野拓実選手の帯同をきっかけに、
アスリートが抱えがちな「孤独」と、
それを支えるソーシャルサポート(メンター)の重要性についてお話ししました。
前回の投稿はこちらから。→ https://mentaltraining-vipro.com/column/00046-2/
パフォーマンスを最大化させる「心理的安全性」
しかし実際には、多くの選手が似たような悩みを抱えています。
だからこそ、自分の気持ちを安心して話せる相手の存在が重要になります。
ここで関係してくるのが、「心理的安全性」という考え方です。
「心理的安全性」とは、自分の考えや感情を安心して表現できる状態のことを指します。
ミスをしても否定されない。
悩みを打ち明けても受け止めてもらえる。
わからないことを素直に聞ける。
こうした環境があることで、人は挑戦しやすくなり、本来の力を発揮しやすくなります。
反対に「失敗したら怒られる」「弱音を吐いてはいけない」という環境では、選手は守りに入りやすくなります。
挑戦することよりも失敗しないことを優先するようになり、結果としてパフォーマンスも伸び悩んでしまいます。
メンターは、この心理的安全性を作る存在でもあります。
監督には言えないことでもメンターには話せる。
チームメイトには見せられない弱さを見せられる。
そうした関係性が選手の心を支えていくのです。
世界を知る南野選手の「一言」が持つ価値
また、スポーツ心理学には「自己効力感」という概念があります。 これは、「自分ならできる」という感覚のことです。
興味深いのは、自己効力感は成功体験だけで高まるわけではないということです。
尊敬する人から認められること。
励ましの言葉をもらうこと。
自分を信じてもらうこと。
こうした経験も自己効力感を高める要因になります。
だからこそ、世界最高峰の舞台を経験してきた南野選手の言葉には大きな価値があります。
技術的なアドバイスではなくてもいいのです。
「大丈夫だ」 「自信を持っていけ」 「自分を信じろ」 そんな一言が選手の背中を押し、パフォーマンスを変えることがあります。
今回のワールドカップで南野選手が果たしている役割は、まさにそのようなものではないでしょうか。
あなたには、本音で話せる「伴走者」がいますか?
もちろん、これは日本代表だけの話ではありません。
高校生でも、大学生でも、社会人アスリートでも同じです。
競技力を高めるために筋力トレーニングを行う。 技術練習を繰り返す。 映像分析を行う。 それらはもちろん重要です。
しかし、自分を支えてくれる人間関係を作ることも、同じくらい重要な競技力向上の要素なのです。
もし今、競技に悩んでいる人がいるなら、一度考えてみてほしいと思います。
あなたには本音で話せる人がいますか。
苦しい時に相談できる人がいますか。
結果が出ない時に支えてくれる人がいますか。
その存在は、もしかすると新しいトレーニング方法以上にあなたの競技人生を変えてくれるかもしれません。
スポーツメンタルとは、心を強くすることだけではありません。
不安があっても挑戦できること。
助けを求められること。
そして、自分を支えてくれる存在の力を活用できることです。
今回「メンター」という言葉がワールドカップという世界最高峰の舞台で広く使われたことには大きな意味があると思っています。
それは、トップアスリートであっても一人で戦っているわけではないというメッセージだからです。
強い選手とは、何でも一人で乗り越えられる選手ではありません。
支えてくれる人への感謝を忘れず、その力を活かしながら前へ進める選手です。
南野選手の存在は、私たちに改めてそのことを教えてくれているように感じます。
そしてこの機会が、多くのアスリートにとってスポーツメンタルを身近に感じるきっかけになることを願っています。