メンタルトレーナーの宇井野です。
新年度になり初めてのコラムとなります。
今回はスポーツ選手に限らず全ての方に関わりのあるお話です。
そもそもスポーツメンタルトレーニングという学問は実は実用性がすごく高く、たとえそのスポーツを引退した後も生きてくる学問だと思っています。
仕事や家事、人付き合い等、普段生活をする中で「やらなければ」と思いながらつい面倒で、先延ばしにしてしまうことってありますよね。
中には、常にそういう状態という人もいるかもしれません。
一方で、やるとなったらすぐにテキパキと動ける人もいます。いったいその違いはどこにあるのでしょう。
なぜ「めんどくさい」と感じるのか?
その答えのキーワードとなるのが「脳」です。
あらゆる行動は、脳が指令を出して体を動かすことで成り立っています。
脳のエネルギーは燃費が悪いのが特徴でもあります。
そこで脳は、体に指令を出す前に、過去の記憶や新たに得た情報をつなぎ合わせ、どのくらいの力で、どのくらい手足を動かせばいいのかを予測することで、エネルギーの消耗を防いでいます。
ところが、新しいことを始める場合や、なんとなく「〇〇しなきゃ」と思っているだけだと、脳は過去の記憶や具体的な指示がない状態で予測を立てなければならなくなり、かなり多くのエネルギーを使うことになります。
すると、脳が疲弊して「どうしたらいいかわからない」状態となり、結果、体への指令は途絶え、「めんどくさい」と感じるのです。
では、どうしたら「めんどくさい」がなくなるのでしょうか?
根性や性格の問題ではなく、「めんどくさい」に打ち勝つには、科学的な戦略がヒントとなり得ます。
その戦略は何かというと「脳が無駄なエネルギーを使わなくて済むように、情報(=脳に届きやすい命令)を与えて状況を分かりやすくしてあげること」です。
なぜ「すぐやれない」のか?
「めんどくさい」と感じるときは、脳が困って体に指令が出せないときです。実際に脳がどんなときに指令を出せなくなるのか、脳の仕組みとともに理解しておきましょう。
- 脳への命令が曖昧 。 たとえば何かを発表するとき「事前に練習をしたときと同じように、口を大きく動かして話そう」と自分に言い聞かせれば(=脳に命令すれば)、脳はあのときと同じようにすればいいとわかるので、当時の記憶を引き出してきて、体への指令をスムーズに出せます。 一方、「緊張しないようにリラックスして発表しよう」と自分に言い聞かせたとしたら、どうでしょうか?「緊張しないでリラックスする」ためには何をすればいいのかが不明確なので、脳は体にどう指令を出したらいいのかわかりません。このように脳にあいまいな命令を出すことが「めんどくさい」感情を生むのです。
- 脳のネットワークの切り替えができていない 。 脳の働きは、2つのネットワークで成り立っています。文字を読む、スマホの画面を見るなど「情報を取り込む」ネットワークと、何もせずにぼーっとしているときに働く「情報を消化する」ネットワークです。 この2つのネットワークをうまく切り替えることで、作業の効率が上がります。例えば会議終了後などに全く休憩せずスマホでネット検索をしたり、SNSや動画を見たりするなど、情報を取り込むネットワークを使い続けるのはNGです。脳が疲弊してしまい、他の作業を「めんどくさい」と感じるようになります。集中して作業をしたら、必ずぼーっとする時間が必要です。
- 初めてのことが多すぎる。 初めてのことに対しては、一から行動計画を立てなければならないので脳への負担が大きく、めんどくさく感じます。さらに、初めてのことが多すぎると、脳の中にある過去の記憶だけでは正確に予測することができません。 例えば職場の食事会などに初めて出席するときに「めんどくさい」と感じるのは、会場に行ったことがない、食事会の雰囲気がわからない、服装が決まっていないなど、脳にとっては予測不能な情報ばかりになるからです。この場合、会場の情報をチェックする、着ていく洋服を着てみるなど、事前情報を追加していくと、予測の精度が高まって、めんどくさくなくなっていきます。
また世の中が変わりやすい時期は避けたほうがいいでしょう。
特に4月は人事異動などで職場環境が変わる、テレビの新番組が始まる、新聞に新しいコーナーができるなど、脳が予測していなかった刺激に多く遭遇します。
心機一転と新しいことを始める方も多いですが、結果的に脳のエネルギーが大量に消費されて、新しいことを始めても途中で挫折してしまう可能性が高いです。
新しいことを始めるのはぜひ「変化の少ない時期」を選んでみてください。
みなさんの行動の選択には脳が大きく関わっているのがお分かりいただけたのではないでしょうか。
とはいえ、このお話を聞いただけではもちろん何の効果も発揮しません。
逆に言えば自分で補えないからこそ、トレーナーや通訳などサポートするメンバーが成り立つということも言えます。
ご自身の活躍のためにも、ご自身で知り、学ぶことプラスで、周りを有効に使うことも必要であるかと思います。
自分で全てのジャンルの専門家になるのはとても難しいことです。不可能ではないかもしれませんが、あの大谷翔平選手でも通訳やトレーナーをつけています。
それはひとえに自分自身の活躍のためを思った最善の方法を考えた時に、理にかなった行動であるとも言えると思います。
人を頼り自分を極め、周りに良い影響を与えられる人が1人でも増えたら、それは素晴らしいことだと思います。
私もまだまだ到底完璧といえるような知識量ではありません。
よく「教育」という言葉が使われていますが、私は共に育つという方の「共育」こそが理想な形だと思います。
最善策を一緒に探し、共に成長していきましょう。