1. メンタルトレーニングが身近になった時代
メンタルトレーナーの宇井野です。
最近では、ごく当たり前のように耳にするようになった「メンタルトレーニング」。
昨今、トップアスリートの中でも徐々にメンタルトレーニングを取り入れるケースが増えてきているそうです。
そんなメンタルトレーニングですが、学んでいくとどうしても抽象的で、少し躊躇してしまうことがあると思います。
筋トレのように、体が大きくなったと一目で分かればモチベーションにもつながりそうですが、メンタルトレーニングは数値化が難しく、目に見えない部分も多いのが現実です。
脳波を測定したり、質問に答える形式でグラフ化する方法もありますが、まだまだ実用的とは言いがたく、普及していないのが現状だと感じます。
そこで今回は、メンタルトレーニングの進め方を“根拠”と一緒にお話ししたいと思います。
2. 脳がつくる「心」の仕組み
脳の生理学的な構造を見たとき、動物の習慣や行動、生命維持など、あらゆる機能を生物学的にコントロールしているのが「脳」です。
動物からさらに進化した人間においては、思考・記憶・推測・感情など、より高度な機能が複雑に絡み合い、表情や動作として表現されます。
ひとりの人間の脳の中では、瞬時のうちに高速かつ精巧にさまざまな情報処理が行われています。
例えば「練習がつらい」「サボりたい」「監督や先輩が嫌い」などの感情は、多くの選手が抱えるものです。
しかし、その感情に支配されてしまうと、脳は否定的になり、練習に身が入らなくなります。
やる気や意義を失ってしまうのです。
そのため、否定的な感情をコントロールし、肯定的なものに切り替えることが必要になります。

3. 「やる気スイッチ」は脳の中にある
「やる気スイッチ、私のはどこにあるんだろう〜♪」というCMを覚えている方もいるでしょう。
実はその“やる気スイッチ”が、脳のとある場所に存在することがわかっています。
それが「扁桃核」と呼ばれる、1.5センチほどの小さな神経組織です。
この扁桃核は、感情や脳の状態を決定する重要な役割を担っています。
心の切り替えや感情のコントロールは簡単ではありませんが、特別な人だけができるわけではありません。
脳の仕組みを理解し、そのスイッチを上手に使えば、日常生活やスポーツにおいても感情を切り替え、コントロールすることで、より良いパフォーマンスを発揮できるのです。
4. 扁桃核がつくる「快」と「不快」
脳科学の世界では、扁桃核は「好き嫌いの脳」「快・不快の脳」と呼ばれています。
この小さな神経組織が、ある物事に対して瞬時に「好き」「嫌い」「快」「不快」と判断するのです。
私たちの感情は、すべてこの扁桃核の判断をもとにつくられています。
たとえば、練習を嫌がったり、試合前に不安を感じたりするのも、扁桃核の働きによるものです。
もし「この練習はつらい」「目標なんて無理」と思うなら、それは扁桃核が「不快」と判断しているサインです。
扁桃核が“不快スイッチ”を入れると、脳全体が否定的モードに切り替わり、ポジティブなイメージを描くことが難しくなります。
逆に「不快」のスイッチを「快」に切り替えられれば、気持ちは「好き」「やってみたい」に変わり、目標に向けてワクワクしながら取り組めるようになります。
これはスポーツに限らず、仕事や日常生活でも大きなメリットをもたらします。
5. 言葉が脳と体を動かす
もしあなたが「もうダメだ」と口にしたとします。
その瞬間、脳は過去の「もうダメだ」という記憶データを検索し、マイナスのイメージを瞬時に引き出します。
その情報を受け取った扁桃核は「深い不快感」と判断し、反射脳(脳幹)に伝達します。
反射脳は「もう無理だ」と感じるように体に信号を送り、結果として体が重くなり、頭が回らなくなります。
場合によっては寒気がしたり、足が動かなくなることさえあります。
特にスポーツでは、試合中に「もうダメだ」と言った瞬間、実際に足が止まった経験がある選手も多いでしょう。
これは、脳がマイナス情報を受け取って、体が即座に反応している証拠です。
6. 不快を快に変える「リフレーミング」
ここで役立つのが「不快を快に変えるトレーニング」です。
それは難しいものではありません。
たとえば何かに失敗したとき、「これは学びの機会だ」と捉えてみてください。
無理やりポジティブに考えようという話ではなく、脳の傾向を知り、それを生かすためのトレーニングです。
これを「リフレーミング」といいます。
意識的にこのトレーニングを続けることで、少しずつ脳のスイッチの切り替えが上手になります。
扁桃核のスイッチを切り替え、「不快」を「快」へと変えることができれば、能力発揮のヒントにもなるでしょう。
7. メンタルトレーニングに「正解」はない
メンタルトレーニングは、世界各地でさまざまな研究が進められていますが、誰にでも当てはまる“特効薬”のような方法はまだありません。
それは、私たち人間が一人ひとり異なる個性を持って生きている証でもあります。
考え方も、体のつくりも、人それぞれ。
だからこそ、自分自身でリフレーミングを行い、自分の「やる気スイッチ」を見つけてみてください。
それが、あなた自身の中に眠る最高のメンタルスキルを引き出す第一歩です。
心と体は、どちらもあなたという「人」を形づくる大切な要素です。
どちらか一方を無理に頑張っても、もう一方が整っていなければ、本当の意味でのパフォーマンスや幸せは続きません。
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